monthly oystergate 2007-08 


 

*English summary is here.

 

香港島の変わりゆくウォーターフロント



セントラルのスターフェリー乗り場とクイーンズピア

香港に行くと、毎回、セントラルのスターフェリー乗り場にある美心パン店でパンを買う。
別にここのパンが特別うまいとか、そういう理由ではない。
ご存じの通り、ここも香港中にある美心チェーンのひとつにすぎない。
私にとって意味があるのは、このパン店のロケーションである。

定宿の関係で、香港島を散策する時はたいてい、セントラルのフェリー乗り場から出発する。
その際に、非常時に備えてパンを幾つか買っておくのだ。
そうすれば、行く先不明のバスやトラムに乗って、とんでもない場所に行き着いてしまっても、お腹が減って困るという心配はとりあえずない。

最後に香港に行った時も、いつものようにこの店でパンを買った。
ついでに、ぶらぶらとクイーンズピア(皇后碼頭)を散策した。
午後のクイーンズピアは人気がなく、スージー・ウォンの時代に外国船が停泊していたのが嘘のように寂れていた。
昔からある売店も相変わらず暇そうで、ウォン・カーウァイの『欲望の翼』に出てくるサッカー場の売店みたいだった。
ピアの水際の柱には凝った洋風の飾りが施されていた。
漢字の筆文字で大きく『皇后碼頭』と書かれた看板が煤けていた。
石やコンクリの造りはあちこち欠けいて、そろそろ修復が必要だなと思った。


日本に帰ってきて、セントラルのスターフェリー乗り場が新しくなることを知った。
合理的で、とにかく土地のない香港のことだ。使わないものをいつまでも放っておくわけがない。
当然、古いフェリー乗り場は跡形もなく壊され、そこには別の何かが作られるのだろう。
長い間慣れ親しんだあの乗り場が無くなる。
ターミナルの脇の日陰でだるそうに座っている力車のおじさんや、使い込まれたデイリーファームの冷蔵ケース、そしておなじみの美心パン店を見ることはもうないのかと思うと寂しかった。

そして追い打ちをかけるように、数ヶ月前、香港ATVのニュースでクイーンズピア(皇后碼頭)が取り壊されると知った。

旧スターフェリー乗り場もクイーンズピアもはその性質からいって、例え保存の価値があったとしても、移築は難しい。せいぜい、柱と看板をモニュメントとしてどこかに持っていくくらいだろう。



解体はする、でも、残す努力もする

・・・と、数週間前、ここまで書いた。
8月10日付けの香港政府の発表によると、クイーンズピアは再構築可能な状態で解体されることになったという。
適切な場所が見つかり次第、補強され移築されるらしい。運がよければ同じ場所に再構築される可能性もあるそうだ。
ピア解体に反対する人々がハンガーストライキまで強行しただけの甲斐はあった。

セントラルの旧スターフェリーターミナルは昨年11月、新しいターミナルのオープン後に解体が始まった。
初めは旧ターミナルの時計塔をそのまま新しいターミナルへ移築する予定だったそうだ。
しかし、専門家の調査により、老朽化と交換部品がないという理由で、移築しても今と同じように動く保証がないことがわかった。そのため、この計画は頓挫した。
それでも、モニュメントとして時計塔だけでも移築しようと努力した関係者の配慮はうれしい。


セントラルの「フリンジクラブ」は昔、デイリーファームの牛乳を保管する氷室だった。
上環の「ウェスタンマーケット」は名前の通り、市場だった古い建物を改装してレトロな雰囲気を生かしたショッピングセンターになっている。
スタンレーにある「マレーハウス」は、かつてセントラルにあった英国軍将校の住居を移築したもので、現在は一部を香港海事博物館として一般に公開されている。
このように、香港では古い建物が再構築・再利用される機会がだんだん増えてきた。
観光客にアピールできるものはどんどん活用しよう、ということだろう。
理由が何であれ、近代建築好きとしては、古い建物が残るのはありがたい。

映画『慕情』のオープニングシーンに現れる、空撮による香港島のウォーターフロントと、現在のビクトリア湾沿いの景色が全く違うのは当然だが、20年くらい前に買った香港のガイドブックに載っているビクトリア湾の景色でさえ、今とは相当違っている。
クイーンズピア跡地に高速道路が通れば、さらに大幅に景色は変わるだろう。


次に香港に行った時、香港島の新しいウォーターフロントを自分の目で見るのが、楽しみでもあり、怖くもある。
そして何度か見るうちにその景色に慣れ、慣れたと思った頃にまた、景色が変わるのだろう。

※左側壁紙は2006年2月のクイーンズピア



Hong Kong Island's waterfront keeps changing


Queen's Pier and the old Star Ferry Pier, both in Central, were demolished.

Before the demolition, local activists did hunger strike to save Queen's Pier.
And it worked that HK government has decided to keep the structure of the pier and rebuild it sometime in the future.

Government also tried to move the clock tower of the old Star Ferry Pier to the new pier, but it didn't work.
Unfortunately, the clock was too old to move and the experts diagnosed that moving may fundamentally damage the clock.
I appreciate that these efforts HK government paid for old buildings and structures.

But, even with the efforts, the view of waterfront on Hong Kong Island will keep changing and nobody can stop it.

*Wallpaper of the left bar: Queen's Pier 2006-Feb



参照 / Ref

香港政府プレスリリース 新しいスターフェリー乗り場が11月にオープン
August 29, 2006/Infrastructure New Star Ferry Piers to open in November http://sc.info.gov.hk/gb/www3.news.gov.hk/ISD/ebulletin/en/category/infrastructureandlogistics/060829/features/html/060829en06002.htm

香港政府プレスリリース クイーンズピア関連
August 10, 2007 Courts Queen's Pier high court ruling welcomed http://sc.info.gov.hk/gb/news.gov.hk/en/category/healthandcommunity/070728/html/070728en05006.htm

Fringe Club フリンジクラブウェブサイト
http://www.hkfringe.com.hk/english/index_eng.asp

 


 

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