monthly oystergate 2007-06 


 

*English summary is not available this month.

 

タフな人々が長生きする街



中国産食品が香港に与える影響

ずさんな中国産食品に関するニュースが増えている。
中国産食品が危ないというのは昔から言われていることだ。
それらの食品の国外輸出量が増え、輸出先国でその品質をチェックされる機会も増えたので、実態がより明らかになってきただけだろう。

香港の人々は頻繁に外食する。
わざわざ材料を買ってきて料理をするより、近所の軽食屋に行って食事をした方が早くて安い。後片付けもいらない。街中にはおかずを売る店もたくさんある。
香港に住んでいたら、自分もたぶん、ほとんど料理をしないと思う。
買ってきた素材を家で調理したものを日常的に食べているのは、私の知っている限り、料理担当のメイドさんかコックさんを雇っているリッチな人たちくらいである。

しかし、街のレストランや軽食屋の厨房を見て、あまりの不潔さに食欲が失せた、とか、出てきた料理に異物が入っていた、といった話はしょっちゅう聞く。
多くの店では味付けに化学調味料を大量に使用しているだろうし、既製のソースやたれに発ガン物質が入っていた事件もあった。
水道水の水質もよくない。
冬になると、葉ものの野菜についていた農薬で中毒を起こして入院、というニュースを必ず見る。
そして当然のごとく、香港では大量の中国本土産食品が流通している。
さぞかし香港では消化器系のガンが多いだろう、と安易に思って調べてみたら、ちょっと違った。

 

ガンの発生率と発生部位

少し古いが、日本の国立がんセンターが2002年のデータをもとに作成したガンの「発生率」一覧によると、香港では男性のガンは「肺」に最も多く発生していた。
次に「肝臓」「結腸」と続いている。
むしろ、日本(大阪)の方が「胃」ガンの発生率が高い。
日本では「胃」ガンは男性のガン発生率の1位であり、「肝臓」「肺」と続く。

ガン部位別発生率 1位 2位 3位
日本男性 肝臓
香港男性 肝臓 結腸(胃は4位)

胃ガンの原因は食物だけではなく、ピロリ菌の場合も多いと言われる。
特に日本人は他の国の人々と比べてピロリ菌の保持率が高い。
そういう事情もあるのだろうが、日本人の方が胃ガンが圧倒的に多いのは驚きであった。

香港女性においては「乳」ガンが発生率1位で、「結腸」「肺」と続く。
これを「発生率」ではなく、「死亡率」で見ると、女性の場合も「肺」ガンが1位になる。

ガン部位別発生率 1位 2位 3位
香港女性 乳(22%) 結腸(15.4%) 肺(13.3%)

ガン部位別死亡率 1位 2位 3位
香港女性 肺(24.7%) 結腸(14.9%) 乳(9.9%)
香港全体(男女) 肺(29.9%) 結腸(13.0%) 肝臓(12.0%)

※パーセンテージの入ったガン発生率と死亡率は "Hong Kong Cancer Stat 2004" HongKong Cancer Registry, Hospital Authority, April, 2007 参照)
※「結腸ガン」は「直腸ガン」を含む

 

深刻なのは食品より大気の汚染

確かに香港に行くと、天気予報と一緒にその日の大気汚染予想率を発表している。

香港気象台ウェブサイトの大気汚染指数のページを見ると、汚染物質の内容まで発表されていた。
例えば、香港島・中環の通常観測地点の汚染物質は"Particulates constituents"(粉塵)とされており、リンクをたどるとさらに詳しく粉塵の内容物について説明されている。
同じ香港島・中環でも、道路脇の観測地点での汚染物質は"Nitrogen dioxide"(二酸化窒素)だった。車の排気ガスから主に発生したものだろう。

汚染の度合いは、

Low(低)
Medium(中)
High(高)
Very High(かなり高)
Severe(深刻)

の5段階に別れている。
「かなり高」レベル以上になると、呼吸器系の障害のある人は外出に注意、などの勧告がある。
日本の光化学スモッグ注意報と似ているが、日本では光化学スモッグ注意報はそれほど頻繁に発令されていない。主に真夏の数日間だけである。
香港の大気汚染はやはり日常的な問題なのだ。

香港気象台のウェブサイトに2006年の大気汚染率を4半期ごとにまとめたグラフがある。
これを見ると、季節ごとに汚染の幅があることがわかる。

1月〜3月 高:6割弱 中:4割弱  
4月〜6月 高:2割弱 中:5割 低:3割弱
7月〜9月 高:2割 中:5割 低:3割弱
10月〜12月 高:7割 中:2.5割  

全体の汚染度では、1月〜3月の汚染度は「高」が6割弱、「中」が4割弱である。
「かなり高」と「低」も何度か発生している。
しかし、4月〜6月になると「かなり高」は一度もなく、「中」が5割を占めている。
7月〜9月も、同様である。
10月〜12月では、7割が「高」、2.5割が「中」となっている。
(ウェブサイトの実際のグラフはもっと詳細でわかりやすいので、興味のある方はそちらを参照してください。)

2006年の香港の気象概要とあわせて見ると、この大気汚染の傾向と総雨量が関連していることがよくわかる。
比較的大気の汚染の少ない4月〜6月は雨量も多い。
特に4月は、3月に比べると一気に雨量が増える。それが9月まで続き、10月に入ると雨量は3桁台から1〜2桁台に落ちる。
雨量と反比例するように、大気汚染も高の割合が一気に増える。
数年分を比べると、台風などの関係で雨量自体の増減はあるが、傾向としては概ねこのような感じだった。
やはり雨が空中の汚染物質を洗い流しているようである。

 

それでも長寿を誇る街

水道水の質もよくないし、料理に化学調味料や添加物もたくさん使っているし、野菜には強い農薬がかかっているし、中国本土から汚染食品が入ってくるし・・・と最初は単純に考えたものの、実際の統計からは、香港の人々にとって最も深刻な問題は、とりあえず、食べ物よりも大気の汚染にあることがわかった。

しかし、世界銀行が2005年に発表したデータに「平均寿命の高い国・地域は、日本と香港がともに82才(2位がスイスで81才)」という驚異的な結果を見つけた。

いろいろ言われつつも、香港の人々の生活は食生活に限らず、相対的には豊かで恵まれているのだろう。
もっと掘り下げれば、様々な面で香港の人々の豊かさがさらに浮き彫りになってくるかもしれない。
(それは引き続きの課題とする。)

 



参照 / Ref

Hong Kong Cancer Registry Website
http://www3.ha.org.hk/cancereg/pub.asp

国立がんセンター がん対策情報センター ウェブサイト
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/index.html

All About Safety
22 Sauces Withdrawn: Foreign Products Found To Contain Excessive Cancer-Causing Chemical
(22のソース類を撤去:発ガン性化学物質を過剰に含む外国製品を摘発)
http://www.aboutsafety.com/article.cfm?id=1061

農民運動全国連合会ウェブサイト
いま食卓に急増する中国野菜は安全か(1/2)
香港などで「毒菜」と恐れられている実体を問う
http://www.nouminren.ne.jp/dat/200204/2002040109.htm

香港政府 居住民向けポータルウェブサイト
http://www.gov.hk/en/residents/

香港政府 大気汚染度に対する対応
http://www.epd-asg.gov.hk/english/advice/advice.php

香港政府(気象台) 2006年の香港の気温など各平均値
http://www.weather.gov.hk/wxinfo/pastwx/ywx2006.htm

外務省ウェブサイト
平均寿命の高い国・地域
http://www.mofa.go.jp/mofaj/world/ranking/jumyo_t.html

Hong Kong Cancer Stat 2004 / Version I Apr, 2007
Hong Kong Cancer Registry, Hospital Authority

 


 

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