monthly oystergate 2006-11 


 

*Summary in English

 

香港の「ミルク」事情


牛乳より練乳

香港では、ホテルのティールームや外資系飲食店以外の場所でコーヒーを頼むと、有無を言わさず、ミルクがたっぷり入ったコーヒーが出てくる。
しかし、入っている「ミルク」は牛乳でもコーヒーフレッシュでもない。エバミルクか、コンデンスミルクなのである。

街のスーパーに行くと、エバミルクやコンデンスミルクの徳用缶が特売されているのをよく見かける。
日本の喫茶店のような「茶餐廳」に入ると、調味料のストックなどと一緒に大量の練乳の缶が棚に並んでいる。
イチゴの季節だけ、小さな使い切り用チューブに入ったコンデンスミルクが売り場に並ぶ日本とは違い、香港では無糖・加糖ともに練乳の地位は高い。

十数年前、香港で"parmalat"のロゴをよく見かけた。
"parmalat"はイタリア発祥で、長期保存ができる紙パック入り牛乳のブランド名である。
鮮度が悪いというイメージがあるからか、日本では長期保存パックの牛乳はあまり定着しなかった。
香港でもそうだったようで、最近は"parmalat"のロゴを見かけない。冷蔵と輸送技術が発達したため、わざわざコストが高く、製造日の古い牛乳を飲む必要がないからだろう。
かわりに、地元ブランドであるKowloon DairyやDairy Farmの乳製品がコンビニの冷蔵庫を占拠している。

 

冷蔵庫が普及するまえに

アメリカでGE社製の冷蔵庫が広く行き渡ったのは1920年代の終わり、日本で冷蔵庫が一般家庭に普及したのは1960年台になってからである。
経済成長の経緯から見ても、香港で冷蔵庫が普及したのは日本よりさらに後のことだろう。

冷蔵庫が普及する以前、高温多湿な香港では、牛乳の扱いも難しかったに違いない。
Dairy Farm社は1886年に設立されたが、当時、冷蔵庫はまだ発明されておらず、同社は牛乳の保存を氷による冷蔵に頼っていた。
当然、新鮮な牛乳は贅沢品であり、その顧客は主に香港在住のヨーロッパ人だった。

そこで、練乳が登場したのではないか。
イギリス植民地だった影響で、香港の人々は中国茶とは別に、紅茶もよく飲む。
しかしイギリス風のミルクティーには牛乳が必要である。もっと安価で手軽にミルクティーを飲む方法はないだろうか、ということで、牛乳の代わりに保存のきく缶入りの練乳を入れてみたのが、有名な「香港式ミルクティー」の始まりなのではないかと自ずと想像がつく。その流れで、コーヒーにも練乳が入っているのだろう。
そして、冷蔵技術が発達して牛乳やクリームが簡単に手に入るようになった今でも、コーヒーと紅茶には練乳、という習慣は、香港人の味覚に根付いて容易には変わらないのだと思う。

ちなみにDairy Farm社は、香港で初めて地元で生産した牛乳を販売した会社で、創立者はスコットランド人の外科医だった。地域の栄養状態の改善を目指し、牛乳を搾るため、輸入した乳牛を香港で育てた。しかし、初めは牛が香港の気候になかなか馴染まなかったそうだ。
それより50年以上後の1940年、ふたりの中国人によってKowloon Dairyが設立される。
この会社も最初は細々と牛乳を販売していたという。しかも翌年には太平洋戦争が勃発し、日本軍が香港を占領したのだから、この戦争が終わるまでは彼らのビジネスが小規模だったのも当然だろう。
もうひとつの香港の牛乳生産者であるTrappist Dairy (Hong Kong) Limitedはランタオ島にあるTrappist Haven Monastery、つまりトラピスト修道院が1956年に牛乳の販売を開始したのが始まりである。 現在、牛乳工場は元朗に、乳牛のいる農場は中国本土に移転している。イメージの割には結構、大きなビジネスに成長しているようだ。

 

食習慣は変わらず

個人的に、随分長い間、香港の乳製品が信用できなかった。
ホテルのビュッフェでヨーグルトを食べるのも恐る恐るというほど、その安全性を疑っていた。
今では街のコンビニで紙パック入りの地元ブランド牛乳を買ってきて、そのままごくごく飲むくらい、香港の乳製品を信用している。
それでもまだ、屋台の怪しい煮込みや、火鍋についてくる生卵などは用心して食べないようにしている。かつて屋台の食べ物でひどい食中毒にかかったことがあるからだ。
冷蔵技術や衛生観念が発達した今でも香港人の練乳好きが変わらないように、私が香港の食品に抱く先入観も、乳製品以外においては、残念ながらあまり変わらない。
生き物の脳に一度刷り込まれた情報を消し去ることはなかなかに難しい。特に食習慣においては。

 

 

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参照 / Ref

英語版ウィキペディア/香港トラピスト修道院 
http://en.wikipedia.org/wiki/Trappist_Haven_Monastery

DairyFarm社ウェブサイト
http://www.dairyfarmgroup.com/global/home.htm

Kowloon Dairy社ウェブサイト
http://www.kowloondairy.com/e/company.html

英語版ウィキペディア/香港式ミルクティー
http://en.wikipedia.org/wiki/Hong_Kong-style_milk_tea

 


Milk of HK

In local tea rooms in HongKong, they add "condensed milk" or "evaporated milk" for milk tea or coffee with milk.

Perhaps, the custom has come from their climate.
Honkg Kong's hot and humid climate didn't go with their former governors' recipe of British "milk tea", using fresh milk.

Before refrigerators became common in HK, only canned "condensed milk" or "evaporated milk" were easily available as substitution for fresh milk to local people.
And the custom stays until today... I think.


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1) Kowloon Dairy Milk Bottle
2) Trappist Dairy Milk Pack
3) parmalat Logo

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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