monthly oystergate 2006-10 


 

*Summary in English

 

香港再開発 2


元朗、今昔

かれこれ15年以上前、香港の友人が元朗にマンションを買った。
すぐに住むわけではなく将来のために、ということだった。

当時、チムサアチョイからそのマンションへ行くための公的な交通手段は、油麻地のフェリー乗り場にあるバスターミナルから出ている路線バスだけだった。
二階建てバスに揺られて1時間。さらにミニバスに乗り継ぎ、未舗装に近い荒れた道を1時間ほど行く。

やっと着いたマンションは、畑と牧場と廃車場に囲まれて、ぽつんと建っていた。
マンションの居間の窓から牛が草を食んでいるのが見えた。
香港ではおなじみの粥や軽食を出す店は見当たらない。
一番近いコンビニまで自転車で20分くらいだと言う。
食料を調達できる店が近所にないので、その晩は一緒に行った友人の家族が持ってきた肉をグリルで焼いて晩ご飯にした。
翌朝はコンデンスミルクをお湯で溶いた飲み物に、何もつけていない食パン。
キャンプだと思えば楽しめたのかもしれないが、その時は「元朗って何もない所だな」と感じるばかりであった。
悪路でバス酔いしたこともあり、その後、二度とそこには行かなかった。

ところが昨年、その友人が本格的に元朗のマンションに引っ越した。
今は家の近くまで鉄道が来ているよ、というので探検がてら行ってみた。

地下鉄のツェンワン線で美孚までいく。
そこでKCRの九広西鉄に乗り換えて元朗へ。
九広西鉄は2003年に開通したばかりで駅も列車も新しい。
車窓から周りの景色を見たかったが、防音のためか、線路の両脇には日本の高速道路にあるような高い壁がめぐらされていて、近くの景色はよく見えなかった。壁を越えて、赤い山肌だけが遠くに見えた。

途中、錦上路駅で降りてみた。
その景色はいつか写真で見た都営三田線開通時の高島平駅に似ていた。
もう畑ですらない、ただの空き地の真ん中に真新しい高架と駅が鎮座しており、とても異質な感じだった。
付近の空き地にはやがて商業施設が建つのだろう。
九広西鉄沿線ののどかな風景も高島平と同じように、あと十数年で激変してしまうのかもしれない。

元朗に着く。
東京に住んでます、と言っても、東京駅のそばに住んでいる人はほとんどいないのと同じで、友人の家もKCR元朗駅からさらに軽鉄(Light Rail)という路面電車に乗り換えてゆく。
初めて降りる元朗駅のまわりは思っていたよりずっとにぎやかだった。
古い町並みを見ると、九広西鉄が開通する前から繁華街として栄えていたのがわかる。

元朗駅まで迎えにきてくれた友人と軽鉄に乗る。
軽鉄は車両こそ今風で、オクトパスも使えるけれど、2両編成であること、そして発車時に「チンチン!」とベルの音がするので、やはり路面電車だなと思わせる。
停車場には改札がなく、時折、車内で切符の検札があるらしいが、乗り降りは完全に自己申告制である。キセルが多いのではないかと人ごとながら心配した。

目的地で軽鉄の駅を降りると、見覚えのある廃車場があった。
「牛はもういないよ」と友人。
畑と牧場があった場所にはマンションが建ち並び、まわりの風景は確かにすっかり変わっていた。
軽鉄の走る大きな道路沿いに団地やマンションが建ち並ぶ。
しかし、元朗駅付近のようなにぎわいはなく、人々が憩うような飲食店も見当たらない。
人が暮らす街としての歴史がまだ浅く、人々はここへ寝に帰ってくるだけ、という感じがした。

チムサアチョイのホテルから友人宅まで、ドア・ツー・ドアで1時間半ほど。
時間はそこそこかかるけれど、前回のバス移動と比べれば快適な旅だった。

 

郊外地域が開発されると・・・

香港もちょっと遠出をすると、まだまだ田畑に囲まれて人影もまばらな場所があるという印象があったが、九広西鉄や軽鉄沿線の開発具合を見ると、香港から田園風景がなくなる日も近いかもしれない。

地元の人々もそう感じているからか、野生生物のサンクチュアリとして、元朗に広大な「ウェットランドパーク」ができた。
意外かもしれないが、蝶や鳥を含め、香港にはたくさんの貴重な野生生物がいる。
自然保護に早く取り組まなければ、それらの生き物の命も危うい。

香港には山が多いため、可住地面積が狭い。
2005年半ばの時点で、香港全体の人口密度は6,420人/平方キロメートルだった。
最も人口密度の高い觀塘では、何と52,160人/平方キロメートルという値が出ている。
平成17年度の国勢調査によると、日本全体の人口密度が343人/平方キロメートル、東京23区でも13,650人/平方キロメートルである。
超高層の住宅が多い点を差し引いても、香港の可住地面積での人口密度がいかにすごいかが想像できる。

 

通勤ラッシュは酷くなる?
 
香港では現在、新しい鉄道路線の計画が幾つもある。
田園地域の開発が進めば、この過剰な人口密度もすこしは緩和されるのだろうか。
日本の東京郊外の例から見て、どうもそうとは思えない。

交通網が発達した結果、東京への通勤圏は非常に広くなった。
つまり、乗降客が多いので電車の混雑もひどい。また、都心に向かって遠距離を通勤するため、ラッシュの時間が長い。

香港では繁華街の人混みこそ凄まじいが、街自体が小さいので移動距離が短く、通勤ラッシュも東京ほど長時間ではない。
しかし今後、郊外のKCRなどを利用する人が大幅に増えれば、東京のように広範囲にわたる悲惨な通勤ラッシュが発生する可能性がある。
そうならないように祈るばかりである。

 

追記・油麻地のフェリー乗り場

この日記ならぬ、月記を書いていると、いろんなことに気づく。
今回も、書きながら地図を見ていて、油麻地にはもうフェリー乗り場がないことを今更ながら知った。
タクシーで東九龍を走りながら、海側が派手に開発されているのを何度も見てはいた。しかし、油麻地からフェリーに乗る用がなかったので、フェリー乗り場がどうなったかなど考えもしなかった。
新旧の香港の地図を照らし合わせてみると、開発の様子は一目瞭然だった。
油麻地フェリー乗り場のあった場所はすっかり埋め立てられていた。

手持ちのアンティークの絵はがきに、懐かしい油麻地フェリー乗り場が描かれたものがあった。それを見て、もう二度とこの建物を見ることはないのだな、と少し感傷的な気持ちになった。
知らぬが仏で、今までエアポートエクスプレス九龍駅や、東九龍の安くてうまいホットポット屋を何気なく利用していたが、次にそこに行くときは、かつてその足下に海があったことを意識せずにはいられないだろう。

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参照 / Ref

香港ウェットランドパーク ウェブサイト
http://www.wetlandpark.com/en/index.asp

ウィキペディア日本版
http://ja.wikipedia.org/wiki/人口密度
http://ja.wikipedia.org/wiki/香港MTR

平成17年国勢調査結果速報による大都市比較(川崎市ホームページ)
http://www.city.kawasaki.jp/20/20tokei/home/kokuchou/sokuhou/daitoshi/gaiyo.htm

KCRC - Kowloon-Canton Railway Corporation(九廣鐵路)
http://www.kcrc.com/html/eng/services/services/west_rail/route_map/index.asp

香港街道地方指南 1991年版 Universal Publications, Ltd.

Hong Kong City Guide 2004年版 萬里機構出版

HONGKONG: THE FACTS Population,
Published by the Information Services Department, Hong Kong Special Administrative Region Government
May 2006

 


Redevelopment in HK 2

More than 15 years ago, one of my friend bought a flat in Yuen Long.
Near my friends flat, there were fields for vegetables and cattle.
In those days, Yuen Long was a totally rural area.

But recently, due to the great developments of transportation, it is much easier to get to Yuen Long.
At the same time, the area is losing the rural atmosphere.

What will come by the newly opened lines and ongoing developments of railways in HK?

I hope that commuters in HK won't experience fierce commuting hell, like in Tokyo.


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Yau Ma Tei Ferry Pier
in the old postcard
- Date unknown

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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