monthly oystergate 2006-08 


 

*Summary in English

 

団地暮らし

 

子供の頃、団地に住んでいたことがある。
また、つい最近まで、都内のとある巨大団地の近くに十年ほど住んでいた。

団地を悪く言う人は少なくない。
同じ間取りの部屋が規則的に並んだコンクリートの建物の集まり。
確かに、一見味気ない場所かもしれない。
しかし、世間で言うほど住みにくい場所ではないし、それなりにいい面もある。

 

香港の公営団地

ご存知の通り、香港にも「公共屋邨」(public housing estates)と呼ばれる団地があちこちにある。
作りは日本の団地と似ている。1階の一部が商店や食堂、保育所、集会所など
になっていて、その上に住宅層がある。
ただし香港の団地は古いものでもかなり高層だ。

香港の団地の高層化は1965年から始まった。
資料によると、「(この頃に建てられた団地には)各戸にベランダとトイレがある」というので、それ以前は団地でもトイレが共同だったらしい。
そういえば、香港の共同バスルームと炊事場の写真を何かで見た記憶がある。
人々がそこで体を洗ったり、鍋を洗う姿が写っていた。
今思うと、あれが初期の団地用バスルーム兼炊事場だったのかもしれない。

 

トイレ=シャワー室

私がよく知っている黄大仙地区の古い団地にもベランダがある。
ベランダには落下防止のため、動物園の動物の檻のように、天井まで届く鉄柵がついている。
鉄柵の隙間から洗濯物を干した竿が外に向かって何本も突き出している風景は、香港の下町名物とも言える


ベランダの突き当たりがトイレ兼シャワー室である。
初めてその団地に行った時、室内ではなくベランダにトイレがあることに驚き、さらにそこがシャワー室も兼ねていることに驚いた。
しかも、シャワーといっても、実際は小型のガス湯沸かし器にシャワーヘッドをつけただけのものだ。

確かに、前出の資料には「ベランダとトイレがある」と書いてあったが、「シャワー」や「バスルーム」があるとは書いていなかった。
つまり、古い団地では、シャワーが欲しい住人は自分でトイレに湯沸かし器を取り付ける必要がある。

このトイレ兼シャワー室、日本の海の家にあるシャワー室に似ている。
まわりをベニヤ板で囲っただけの砂の上の屋外シャワー。サンダル履きのまま、頭や体にちょろちょろとお湯をかけるアレだ。
香港のトイレ兼シャワーはコンクリート壁と鉄製のドアに囲まれ、真ん中に洋式トイレの便器が鎮座している点が決定的に違う。
当然、シャワーを浴びるとトイレは水浸しになる。
知人の家ではシャワーを使う前にトイレットペーパーをホルダーから外し、壁際の戸棚にしまうようにしている。
生活の知恵である。

 

狭くても楽しい我が家

同じ団地内でも部屋によって12平米くらいから60平米くらいまで、床面積はかなり違うらしい。
私の知人の家は日本のマンションでいうと、3畳ほどの細長いベランダに、6畳2間とLDK8畳くらいの広さがある。
これは公営団地では平均的な広さだと思う。
そこに2段ベッドが3つ、ダブルベッドが1つ、ソファベッドがひとつが置かれている。
その部屋ではかつて、最大で8人が生活していた。
近所の他の世帯も似たり寄ったりだった。

私が子供の頃住んでいた日本の団地でも、香港ほどの大家族ではないが、どの世帯にも子供が2人はいた。
放課後になると団地のあちこちで子供たちが自転車を乗り回していて、とてもにぎやかだった。
子供だったので、治安や大人同士のもめ事がどうだったかは覚えていない。
覚えているのは、団地には大人も子供も、とにかく人がたくさんいて、活気があったということだけだ。
香港の団地育ちで私と同世代の人々も同じように感じる部分があるのではないかと思う。

 

それでも全人口の3割が住む

時代が変わるにつれて住居に対する要求も変わり、今や香港でも日本でも古い団地にすすんで住みたがる人はあまりいないだろう。
知人の住む黄大仙地区の団地も、あちこち老朽化しているし、治安も悪くなっていると聞いた。
それでも、香港政府によると、2005年末の時点で公営住宅への入居待機リストには9万4100件の申請があり、入居までの待機期間は平均2年だという。
また同じく2005年末、香港全人口の31パーセントにあたる213万人が、公営の賃貸住宅に住んでいたということだ。
香港の住宅難は日本のそれとは比較にならないほど厳しいという現実が、この数字からわかる。
団地の過疎化が問題になっている日本と違い、香港ではこれからも多くの人々が、好むと好まざるとに関わらず、団地で暮らしていくのだろう。

ウォン・カーウァイの映画は好きだが、彼の映画の中に出てくる香港は、日本で言えば「濱マイク」シリーズを見て横浜を知れ、というようなものだ。
監督の美的フィルターなしで香港の公営団地の様子を詳しく見たい方には、フルーツ・チャン監督の「メイド・イン・ホンコン」という映画をお勧めする。
これを見ると、香港全人口の3割はこんな場所でこんな風に暮らしている、というリアリティが、少しは伝わるかもしれない。

 

 



参照

Hong Kong Housing Authority Web Site
http://www.housingauthority.gov.hk/

HONGKONG THE FACTS: Housing
Published by the Information Services Department, Housing, Planning and Lands Bureau, Hong Kong Special Administrative Region Government

Hong Kong SAR Government Information Center Website
Hong Kong Background Facts − JULY 2006
http://sc.info.gov.hk/gb/www.info.gov.hk/info/hkbf.htm

Historical Dictionary of Hong Kong & Macau
Asian Historical Dictionaries ; No. 10
Roberts, Elfed Vaughan. Ling, Sum Ngai. Bradshaw, Peter.
Published by Metuchen, N.J. Scarecrow Press, 1992.

 

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Publuc Housing in HK

In 1953, a big fire broke out in the Shek Kip Mei area, and more than 58,000 people lost places to live.
So, the government provided housing for them, and it was the begining of Public Housing in HK.

Public housing estates had started to be high-rise buildings since 1965, providing a balcony and toilet inside each flat.

According to the government publication, as of 31 December 2005, about 2.13 million people, 31 per cent of the population of HK, lived in public rental housing estates.
And about 94 100 applications on the Waiting List for the housing. They have to wait for approximately 2 years on an average.

 


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