monthly oystergate 2006-01 

紅くて甘い肉の誘惑

中華ソーセージ

中華ソーセージをスライスして、ごま油で炒める。オイスターソース、紹興酒、醤油で味をつけ、同じようにスライスした長ネギを添える。窓際の植木鉢から香菜をちぎって散らす。願わくば、あのパラリとした外米があれば完璧なのだが、日本の白米でもよしとする。

香港のお昼時、勤め人でごった返すオフィス街の食堂で食べた中華ソーセージご飯は、メラミンの白いお皿に無愛想に盛られていた。香菜なんて気のきいたものはなく、代わりにやや固めに焼いた目玉焼きが乗っていた。あれから何年経ったことか。未だにあの時の味が不意打ちを仕掛けてくる。

ある日、無性に中華ソーセージが食べたくなった。
仕事帰りに大きなデパートの地下にある中華料理店の売店を何軒ものぞいたが、どこにも売っていなかった。 それから数日間、中華ソーセージ独特の甘い脂の味が頭から離れない。


結局、意を決して、横浜中華街まで小一時間の旅をするはめになった。
中華街でも中華ソーセージを量り売りする店はそう多くない。 アヒルや焼豚が吊られたウィンドウをのぞきながら、表通りを見て歩く。 そのうち、自分の食指が動くのは紅くて甘い肉にばかりだと気づく。


紅くて甘い焼豚


中華ソーセージ同様、紅くて甘い焼豚も普段はなかなか手に入らない。
今日日、多くのラーメン屋さんでは茶色くてしょっぱい煮豚をチャーシューと呼んで出している。あれはあれでおいしいのだが、私に不意打ちを仕掛けてくるあの香港の味とは決定的に違う。

香港でチャーシューといえば「蜜汁叉焼」、紅く甘いタレが塗られてローストされた豚肉を言う。名前にはっきり「蜜汁」と表記されているくらいだから、間違いなく甘い。
中華ソーセージご飯と並び、この「蜜汁叉焼」が乗った「叉焼飯」も現地で大変人気がある。お昼時に「大家楽」や「大快活」などの中華ファーストフード店に行くと、これらの紅くて甘い肉類が載ったご飯メニューがよく売れている。飲茶でも「肉まん」と言えば、基本的にこの蜜汁叉焼と椎茸のあんが入ったまんじゅうのことである。

ところが近所のラーメン屋さんでも紅いチャーシューを出している、と家族が言う。
行ってみると本当に紅いチャーシューがあった。メニューに、「当店はいわゆる『煮豚』ではない、本当の中華風のチャーシューをお出ししています」というような説明があった。わざわざそれを売りにする店があるくらいだから、やはり紅くて甘い肉は特別な存在であり、私以外にもそれに惑わされる人々は確実に存在しているということだろう。
そこではお値段もそれ相応、平均的なラーメン屋さんよりは少し高めであった。



なぜ紅い?


さて、紅くて甘い肉の「甘み」は砂糖や蜂蜜によるものだとしても、「紅い色」はいったいどうやってつけているのだろうか。
中華食材業者のウェブサイトを見ても、「紅いのはおめでたいから」などときれいごとを言うところはあっても、「食紅で色をつけてます」と明言しているところはなかった。


中華ソーセージのレシピは見つからなかったので、叉焼のレシピをネットで調べてみた。すると、ヘルシー指向の現代にはそぐわないのか、多くは色をつけない調理法を用いていた。
しかし、某有名ホテルのシェフの叉焼レシピに、材料としてちゃんと「食紅」と書かれているのを見つけた。誠実なシェフである。食べ物のおいしさには味だけでなく見た目も含まれる。本場の叉焼は紅いのだから、やはりここはおとなしく食紅を使って同じものを作るのが筋だろう。



ガッツだ、叉焼!


香港Yahoo!でも叉燒のレシピを検索してみた。するとほとんどは食紅を使っていたが、そうでない場合は必ず「叉燒醤」という専用のタレを使っていた。
オイスターソースで有名な李錦記の英語版ウェブサイトで「叉燒醤(Char Siu Sauce)」の成分をみてみると、予想通り,"Color Added ( FD&C Red No. 40 )"、つまり「食紅」が入っていた。
やはり、彼の地の人々は「着色料が怖くて叉焼が食えるか!」と言うガッツのあるスタンスで叉焼に望んでいたのである。


小学生の馬鹿げた質問で「うんこのにおいのするかれーと、かれーのにおいのするうんこ、どっちがいい?」というのがある。
どっちもだめだ。カレーはカレーのにおいがしなくてはカレーではない。同じように、叉焼だって紅くなければいけないのだ。


ちなみに李錦記の叉燒醤には、紅くて甘い肉に欠かせない砂糖と蜂蜜も、かなりの割合で入っている。


紅くて甘い肉の危険な誘惑は続く。

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This is about Chinese sausages and Roasted Pork.
English version may come later.

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